トピックス一覧 DATE:2016.12.12 |
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●社会保険診療報酬は消費税が非課税 消費税法では、国内において事業者が事業として対価を得て行われる取引を課税の対象としています。ただし、これらの取引であっても消費に負担を求める税としての性格から課税の対象としてなじまないものや社会政策的配慮から、課税しない非課税取引が定められています。 社会保険医療の給付等(健康保険法、国民健康保険法などによる医療、労災保険、自賠責保険の対象となる医療など)も、社会政策的配慮から、非課税取引とされています。 ●非課税といっても完全には非課税ではない 消費税の納税負担者は消費者です。私たちが消費者としての普通の感覚からは、“非課税”であると言われれば、社会保険診療(=健康保険の対象となる医療費)には消費税の負担はゼロと捉えがちです。しかしながら、じつは公定価格である医療費には一部その前段階までの経費(=医薬品・医療材料の仕入れや求人・申告などの委託料、電気・ガス・水道料など)に掛かる消費税も含まれているのです。 消費税の仕組み上、非課税売上に対応する仕入れ税額は控除できないので、売上対価(=医療費)に上乗せしないと医療機関の自己負担となってしまいます。また医療費は公定価格なので、消費税が上がったからと言って勝手に価格を変えることはできません。こうした事情を考慮して、公定価格である医療費や薬価はその分を調整された価格となっています。 ●医療機関側も損税(控除対象外消費税)が発生しています 一方の医療機関側も非課税であるがゆえに自己負担となっている消費税があります。代表的なものは病院建物や高額医療機器などに掛かる消費税であり、この部分は医療機関側の負担となって残っています。 日本医師会などは、この損税部分の解消を求めた要望を続けていますが、なかなか解決には至っていません。 平成31年10月の消費税率10%への引き上げと同時に軽減税率が導入され、併せて適格請求書等保存方式(いわゆる「インボイス制度」)も導入される予定です。それを機に非課税になるような改正が行われることを期待しています。
●花押を押した遺言、裁判で無効確定 印鑑の代わりに「花押」が記された遺言書の有効性が争われた裁判で、今年6月、最高裁判所が「重要な書類に花押を使うという意識が社会の中にあるとは認めがたい」として、遺言書を無効とする初めての判断を示しました。遺言書の方法には大きく分けて「自筆証書遺言」、「公正証書遺言」、「秘密証書遺言」の3つの方式があり、テレビドラマなどでよく目にする遺言者本人が全文自筆で作成しているものが「自筆証書遺言」です。一般的な「自筆証書遺言」の特徴として、自分だけで作成でき費用がかからず手軽な点が挙げられますが、内容、日付、氏名全てを自筆する他、印鑑を押印することなど、遺言書として認められるための様式が細かく定められています。そのため、冒頭の例のように、せっかく遺言書を作っても裁判で無効とされてしまう例も少なくありませんでした。 自筆証書遺言の方式が緩和されるか こうした問題もあり、現在取りまとめられている「民法(相続関係)等の改正に関する中間試案」では、自筆証書遺言の方式について次のように緩和する措置が検討されています。 ●一部ワープロ打ちが可能に 現行の制度では遺言の全文を自筆で記載しなくてはならず、この点をネックに感じて公証役場が作成してくれる「公正証書遺言」を選択する例も少なくありませんでした。今回の中間試案では、財産の特定に関する部分(不動産や預貯金口座の表示など)は、ワープロ打ちでも可とされています。また現在、遺言書の加除訂正による変更箇所には「署名及び押印」が必要とされていますが、署名のみで足りるものとし、作成時の負担が軽減されると見込まれています。 ●自筆証書遺言の保管制度の創設 現在、自筆証書遺言は作成後、自分で大事に保管するか、信頼できる人に預けて保管してもらうしか方法がありません。そして実際に相続が発生すると、これを家庭裁判所に提出し、遺言書の形式などに関する事実を調査、遺言書の現状を確保するための検認手続を受ける必要があります。中間試案では新たに公的機関による保管制度を創設し、遺言者が保管の申出をすることができるようになる他、ここで保管された遺言書については検認を要しないとされ、手続きの煩雑さが解消されることに期待がもたれます。
●相続時精算課税は「相続・贈与の一体課税」 親子間の贈与などで「相続時精算課税」を適用した財産の価額は、親の相続が発生した時の相続税の申告で、相続税の課税価格に加算して相続税を課税し直し、贈与時に課税された贈与税の精算を行います(これを「相続と贈与の一体課税」といいます)。 この場合、相続税の課税価格に加算する財産の価額は、「贈与の時における価額」とされています。そのため、相続税の申告の際には、過去の贈与税の申告書を見たり、税務署に対して開示請求手続を行ったり、贈与税の課税価格として用いた「贈与の時における価額」の確認作業を行います。 ●昔の精算課税の申告が間違っていたら? このとき、過去の贈与税申告で用いた「贈与の時における価額」が間違っていたことに気付いてしまったらどうしましょう? まだ贈与税の修正申告を行うことができるのであれば、修正すれば良いのです。ただ、既に除斥期間が過ぎてしまい是正ができないとなると悩ましい問題がでてきます。 相続税の課税価格には「実際に申告した贈与税の課税価格」を加算すべきでしょうか? それとも「是正後の贈与の時における価額」を加算すべきでしょうか? ●「是正後の贈与の時における価額」を加算 「是正後の贈与の時における価額」を加算する―が正解です。東京国税局資産税課の資料に記されていることを簡単にまとめると、条文には「贈与税の課税価格の計算の基礎に算入される財産に係る贈与の時における価額」を相続税の課税価格に加算しなさいと書いてあるだけで、それは「贈与税の申告書に記載された価額」を必ずしも前提としていない―ということなのです。 例えば、過去の贈与税申告(相続時精算課税適用)で土地の評価額に誤りがあった場合には、それが贈与税の修正申告など是正できる期間を過ぎているときであっても、贈与税の申告書に記載された土地の評価額ではなく、(申告を前提としないで)本来申告されるべきであった土地の評価額を相続税の課税価格に加算することになります。 ●相続時精算課税分の贈与税額控除は? なお、この場合の相続税額から控除される相続時精算課税に係る贈与税相当額は、「課せられた贈与税額相当額」(申告した贈与税額)となります。贈与税額控除の趣旨は「二重課税の排除手続」であるため、取扱いが異なる形となります。 |
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